ロケ地紹介:縄文杉・宮之浦岳縦走

5日目は早朝午前4時に起床し、身支度を整え、1時間後には民宿「水明荘」を出発しました。
この日から1泊2日の行程で宮之浦岳を縦走するのですが、そうなると登山口と下山口が違う場所になるのでレンタカーは使えず、早朝に走っている登山バスを利用することになります。
屋久島には全国チェーンの24時間営業のコンビニはないのですが、その代わりに早朝弁当の店が存在します。
前日の午後に予約をし、翌朝登山への出発前に受け取るシステムになっています。
安房地区中心部にある「できたて屋2」で早朝弁当を受け取り、店のすぐ前にあるバス停から路線バスに乗ります。
路線バスは屋久杉自然館前が終点になっていて、そこから登山バスに乗り換えて荒川登山口に向かいます。


荒川登山口です。県道592号の荒川三叉路からこの登山口までは車両乗り入れ規制が敷かれており、3月から11月まではバスでしか来ることができません。ここで朝食をとりました。


登山口を出発すると、平坦なトロッコ道をひたすら歩くことになります。
縄文杉までの片道約11kmの道程のうち、約8割がトロッコ道になってます。
このトロッコ道は安房森林軌道の線路にあたります。安房森林軌道は日本で唯一の現役の森林鉄道で、元来は木材の運搬に使用されていましたが、林業が衰退してからは水力発電用ダムの保全、スギの土埋木、トイレの汚物、負傷者の運搬などに使用されています。


1995年5月18日、スタジオジブリのスタッフは荒川登山口と縄文杉を往復しています。
ジコ坊がタタラ場を訪ねた時、通路の上を通る砂鉄流しの樋(とい)がありましたが、上の写真はそれを思い出させます。


小杉谷小・中学校跡です。この付近はかつて屋久杉伐採の拠点になった場所で、小さな集落が存在しました。
最盛期の1960年には集落の人数が540人に達し、郵便局や銭湯なども設置され、小・中学校の生徒数は147人に達しました。しかし、林業の衰退と環境保護の動きから1970年に屋久杉伐採の事業所が閉鎖され、それとともに小・中学校も閉校となりました。


三代杉です。「倒木更新」と「切株更新」を1度ずつ経て生育しているスギで、1代目のスギの倒木の上に2代目が育ち、2代目が伐採されて切株になったところに現在の3代目が育っています。


荒川登山口から3時間弱で大株歩道入口に着きます。トロッコ道が終わり、ここから本格的な登山道になります。
緩やかだった登りも急にきつくなります。


大株歩道入口から30分程するとウィルソン株が見えてきます。巨大な屋久杉の切株で、写真では少し分かりにくいですが、切株の入口に立っている黒服の人と比べると如何に大きいかが分かると思います。
ウィルソン株は、一説には豊臣秀吉によって建立された方広寺大仏殿の建材として1586年に伐採されたと言われています。伐採されなければ、樹齢3000年で縄文杉よりも大きな屋久島最大のスギだったと推定されています。
名前の由来はアメリカの植物学者アーネスト・ヘンリー・ウィルソン博士で、日本における植生の研究のため2度来日し、屋久島にも訪れています。


ウィルソン株の内部には小さな祠がありました(写真左)。屋久島を支配する神を祭った木魂神社です。
株の付根からは水が湧き出ていて、そこから株の天井を見上げるとハート型になっています(写真右)。


大王杉です。1966年に縄文杉が発見されるまでは屋久島最大のスギでした。


大王杉を過ぎると、世界自然遺産登録地域に入ります。


夫婦杉です。3メートルくらい離れて立っている2本のスギが、高さ10メートルくらいのところに生えている枝(写真左の下の方に見える太い枝)によって繋がり、その様子が手を繋いでいるように見えることからこの名前が付けられました。
この枝がどちらのスギから生えてどちらのスギに食い込んでいるかは不明だそうです。
写真左の右が男杉で、左が女杉です。樹幹は男杉の方が太いのですが、樹高は女杉の方が高いです。


縄文杉です。現在確認されている屋久杉の中では最大の個体で、1966年に発見されました。
「縄文杉」という名前の由来は、縄文時代から生きてきたからという説と、樹幹が縄文土器に似ているからという2つの節が存在します。樹齢は2000年から7000年と幅広く推定されており、正確な数字は分かっていません。

縄文杉までは登山客がたくさんいたのですが、ここを過ぎると一気に静かな登山行となりました。
登山客の多くが縄文杉目当てで、ここで引き返してしまうからです。
私は縄文杉からさらに1時間半くらい登ったところにある新高塚小屋で1泊することにしました。


6日目、この日も午前4時に起床し、朝食と身支度を済ませ、午前5時半に新高塚小屋を出発しました。


新高塚小屋から少し登ると、標高が高くなってきただけあって木々の樹高が低くなり、見晴らしが良くなってきます。
写真左は新高塚小屋から1時間程登ったところにあるビューポイントから見た宮之浦岳です。
また、この辺りから写真右のような白骨樹も目立ってきます。そういえば、シシ神の池の中にある島(撃たれて意識を失ったアシタカをサンが引っ張って行った場所)にも、白骨樹らしきものを確認することができますね。


縄文杉から宮之浦岳に至る登山道は宮之浦歩道と言われていますが、ここには多くのヤクシカが生息しています。
道中、これでもかという程ヤクシカを見かけました。野生のシカを見ることができるのは嬉しいのですが、これだけ数が多いと生態系のバランスという点で心配になりました。後で調べてみたところ、案の定シカが増えすぎて問題になっているそうです。
この辺りのシカは人慣れしているせいか、かなり近づいても逃げませんので、容易に写真を撮ることができました。
写真左は私の後をついてくるように歩いていたメスで、写真右は草を食べるのに夢中になってるオスです。


標高1600メートルを超えると、屋久杉の生育もまばらになり、ヤクシマダケに覆われた亜高山帯性草原となります。
草原には写真のようなヤクシマシャクナゲが点在しています。


屋久島の山と言えば屋久杉や照葉樹林のイメージが強いですが、巨大な岩がゴロゴロしているのも大きな特徴です。
サン達に小石や木片を投げつけた猩々が立っていた巨岩、乙事主が吠えた岩場、モロ一族の塒など、「もののけ姫」の本編にも印象的な巨岩が多く登場します。写真左は坊主岩、写真右は平石岩屋です。標高が高くなると植生もまばらになるため、巨岩の存在感が一層増します。


平石岩屋を過ぎると、いよいよ宮之浦岳が間近に見えてきます(写真左)。一面ヤクシマダケ(ヤクザサ)に覆われ、大きな岩が点在しています。
右手には屋久島第2の高峰、永田岳も見えてきます(写真右)。永田岳は山頂付近が岩だらけで迫力がありました。


永田岳は縦走ルートには入っていないのですが、時間に余裕があったので、こっちにも登ることにしました。
宮之浦岳山頂直下の焼野からピストンします。永田岳山頂付近は結構な急登で、岩もゴツゴツしてて登りにくく、かなり体力を消費しました。写真右は永田岳山頂から見た宮之浦岳です。


宮之浦岳の山頂です。正確には写真右の岩場が山頂で、屋久島および九州地方の最高地点です(標高1936m)。
永田岳にピストンしている間にガスがかかり、宮之浦岳山頂に着いた時には景色が見られなくなったのが残念です。


宮之浦岳の山頂で昼食をとり、下山に入ります。岩がゴツゴツしている屋久島の山では、より下山に気をつけなくてはいけません。写真は屋久島第3の高峰、栗生岳の山頂付近にある巨岩です。


霧に包まれ神秘的な雰囲気の花之江河(はなのえごう)です。晴れていれば向こう側に黒味岳を望むことができます。
花之江河は日本で最南にある高層湿原です。高層湿原とは、植物の分解が進まずに堆積して出来た泥炭土による湿原で、主に気温の低い地域で見ることができます。屋久島は緯度が低いのですが、標高の高い場所では気温が低くなるのでこのような湿原が存在するのです。
湿原はミズゴケで覆われ、周囲には写真右のような白骨樹を見ることができます。この白骨樹は枯れているように見えますが、実はまだ生きています。


小花之江河(こはなのえごう)です。花之江河よりも小規模な湿原ですが、こちらも霧に包まれて神秘的な雰囲気を醸し出していました。


淀川登山口です。宮之浦岳登頂のみの行程なら、ここから登るのが便利で、健脚者なら日帰りで登頂できます。
マイカー利用者はここで下山終了となるのですが、路線バス利用の私はここからさらに紀元杉のバス停まで林道を歩かなくてはなりません。


紀元杉バス停まで向かう途中、林道沿いにあった川上杉です。非常に端正な姿をした屋久杉です。


紀元杉のバス停です。ここでようやく今回の登山行が終了です。


バス停から100m程歩いたところに紀元杉が立っています。車で見に行ける屋久杉の中では最大の個体で、多くの観光客がここを訪れます。恐らく縄文杉に次ぐ知名度があるんじゃないでしょうか。樹の上部は白骨化しており、林道の斜面下に生育しているため、その様子を容易に見ることができます。


林道から階段で斜面下に降りることができます。樹の上部は白骨化していますが、樹幹は太くて迫力があります。


最後の夜は安房地区の民宿に泊まり、翌朝は安房港から始発のトッピーで帰路につきました。
屋久島には6泊7日滞在したのですが、まだまだここにいたいと思わせる程充実したひと時でした。


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